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この案件は、私が保険会社側の代理人として担当した交通事故の裁判です。

交通事故・請求の内容

信号機によって交通整理の行われていない交差点で、優先道路側を走行してきた車両(Xさんが運転)と、劣後道路側を走行してきた車両(Yさんが運転)とが出会い頭で接触する交通事故が発生しました。

※ 過失割合は、Xさん側が10%、Yさん側が90%として扱われる事案です。

この事故で、Xさんは頸椎捻挫腰椎捻挫などを怪我をし、約2年間にわたって整形外科や接骨院で治療を続けた後、自賠責の後遺障害認定手続を受けましたが、後遺障害が認められませんでした(非該当)。

この認定に不満があったXさんは、弁護士を立てて、加害者であるYさんを相手に、損害賠償として治療費傷害慰謝料・後遺障害による損害(逸失利益後遺障害慰謝料)など合計600万円を請求する裁判を起こしました。

争点は治療期間・接骨院の治療・後遺障害

この裁判では、加害者であるYさん側の代理人として、次の3点を争うことになりました。

まず、頸椎捻挫などの事案にしては治療期間が長すぎることを争いました。
交通事故による怪我の治療については、裁判を通じて、症状固定(治療の効果が一進一退の状態になった状態)までとされています。
そこで、Xさんの主治医に医療照会を行いました。その医師の回答からは、症状固定について「患者の理解が必要である」と誤解しており、Xさんが症状の改善が進まないことを認めなかったことと相まって、治療が長期化してしまっていること指摘しました。
また、Xさんのカルテなどを取り寄せて検討してみると、だいたい事故から4か月程度で治療効果が頭打ちになっいたことから、Xさんのカルテやレントゲン画像などを他の医師にも診てもらい、Xさんの症状固定時期について意見書を書いてもらい、裁判所に提出しました。
そうしたところ、裁判所は、ほぼ当方の主張を認める形で、治療期間としては4か月が妥当であると認定しました。

次に、接骨院での治療について不要だったのではないかという点も争いました。
交通事故による怪我の治療として接骨院などに通う場合、一般的に、医師の指示ないし同意の下で行われる必要があり、接骨院での治療の効果についても医師による症状管理(チェック)が必要であるとされています。
この点について、Xさんの主治医は、先ほどの医療照会に対して、Xさんが接骨院に通っていることについて「知らない」と回答していたことから、Xさんが無断で接骨院に通院していたことが判明しました。
その結果、接骨院での治療についても、裁判所は、当方の主張のとおり不要であったと認定しました。

さらに、Xさん側の弁護士が主張する14級に相当する後遺障害の点についても、自賠責による「非該当」との認定を覆して後遺障害を認めるためには、Xさんの訴える後遺症を医学的に説明できるだけの証拠が必要であることを主張し、そのような証拠をXさん側の弁護士からは提出されていないことを指摘しました。
その結果、後遺障害の点についても、裁判所は、当方の主張のとおり非該当との自賠責の認定結果を維持しました。

裁判所の判決

こうした争点の判断を踏まえて、裁判所は、今回の交通事故によるXさんの損害額について、既に保険会社から支払われていた金額(治療費など)で賄われているとして、

請求棄却(Xさんの請求を認めない) ※

との判決を言い渡しました。

※ 損害の内訳

請求額 判決の認定額
治療費 295万円 15万円
文書代  16万円 0円
交通費  14万円 5100円
通院慰謝料 130万円 30万
後遺障害慰謝料 110万円 0円
逸失利益 95万円 0円
過失相殺 0% ▲10%
損害填補 ▲120万円 ▲120万円
弁護士費用 60万円 0円
最終損害額 600万円 0円