これは、当事務所の弁護士が保険会社側の代理人として裁判を担当した交通事故の案件です。
事案の内容
交通事故による軽度外傷性脳損傷(MTBI)と診断され、8か月以上入院した後に、意識変容や左半身不全麻痺などの後遺症が残り、そのために日常生活も自立できずに常時介護を要する状態になってしまった被害者Xは、弁護士を立てて、MTBIを原因とする高次脳機能障害(後遺障害1級相当)を主張し、交通事故の加害者であるYに対して損害賠償として合計約1億8000万円を請求する裁判を起こしました。
そのため、加害者側の保険会社を通じて当事務所の弁護士がYの代理人に選任され、この裁判を担当することになりました。
争点:MTBIによる高次脳機能障害はあるのか?
裁判において、MTBIによって高次脳機能障害といった重篤な後遺障害が残存するのかが争点になりました。
X側はMTBIの専門家を自称する医師の意見書を証拠として提出していました。
これに対し、当事務所の弁護士は、まず、裁判所を通じてXさんの事故後に治療を受けていた医療機関からカルテやMRI画像などの医療記録を取り寄せることにしました。
その上で、この医療記録を脳神経外科医に検討してもらったところ、Xに高次脳機能障害が残存するような脳へのダメージを示すような意識障害もMRIなどの画像所見もないことから、脳への外傷による高次脳機能障害ではないという意見が示されました。
またWHO(世界保健機関)の報告書においてもMTBIと高次脳機能障害との間には有意な関係は認められないとされていました。
そこで、当事務所の弁護士は、脳神経外科医の意見書やWHOの報告書を証拠として提出するとともに、これらを基にX側の医師の意見が医学界の一般的な見解とは異なった独自の見解であるということを裁判官に理解してもらうための書面などを作成し、裁判所に提出しました。
裁判所の判断:MTBIを否定
その結果、裁判所からは和解案として示された
MTBIによる高次脳機能障害が否定される
という見解とともに
請求額1億8000 ➡ 和解金200万円
という請求額から大幅な減額がされた形での和解が成立し、X側の不当な請求を退けることに成功しました。