これは、当事務所の弁護士が保険会社側の代理人として担当した裁判の事例です。

被害者Xの請求額:1億4000万円

Xは、横断歩道を歩行中に車に撥ねられ脳外傷びまん性軸索損傷)などの怪我を負い、その後の後遺障害認定でも高次脳機能障害(5級)と外貌醜状(12級)とによる併合4級の認定を受けてたことから、弁護士を立てて加害車両を運転していたYを相手に

逸失利益   4800万円
後遺症慰謝料 3000万円
将来介護費用 3250万円

などを含む合計約1億4000万円の損害賠償を求める裁判を起こしました。

そのため、加害者側の保険会社を通じて当事務所の弁護士がYの代理人に選任され、この裁判を担当することになりました。

争点:高次脳機能障害「5級」の認定が妥当か?

裁判での争点は、Xが受けていた後遺障害併合4級のうち高次脳機能障害(5級)の認定が妥当かどうかという点でした。

まず裁判所を通じてXのカルテや検査記録など医療記録を病院から取付けた上で、その中身を検討してみると、高次脳機能障害の諸症状は認められるものの、カルテに記載されているXの症状や検査の結果からすると、5級という認定結果は重すぎるのではないかという疑問を抱きました。
そこで、改めて高次脳機能障害の専門医にXの医療記録を検討してもらった上で意見書の作成を依頼したところ、専門医からは「Xの後遺障害は7級程度にとどまる」との意見が示されました。

このような調査・検討を踏まえた上で、この専門医の意見書を証拠として裁判所に提出するとともに、Xの後遺障害のうち高次脳機能障害の点については「7級」にとどまり、外貌醜状(12級)の点を含めても併合6級が妥当な等級であることを主張しました。

判決:後遺障害等級を引き下げ大幅減額

その結果、裁判所の判決では、Xの後遺障害の程度について、当方の言い分が認められる形で

併合6級(つまり高次脳機能障害の点は7級程度にとどまる)

との判断がなされ、Xの労働能力喪失率についても

92%(併合4級) ➡ 56%(7級:外貌醜状は原則として労働能力に影響しない)

との認定がなされました。
そして、この後遺障害の認定を受けて、損害額についても

請求額1億4000万円 ➡ 認容額5483万円
( 内訳の一部 )
逸失利益   4800万円 ➡ 2855万円
後遺症慰謝料 3000万円 ➡ 1180万円
将来介護費用 3250万円 ➡     0円

といった認容にとどまり、X側の請求額から60%以上を減額することに成功しました。