これは、保険会社側の代理人として担当した交通事故の裁判です。

交通事故の内容

一般道路と自転車専用道路とが交差するところで、自転車横断帯上を走行して一般道を横断しようとしていた自転車と、一般道を進行してきた自動車とが接触する交通事故が発生しました。

この交通事故で、自転車を運転していたXさんは、顔面挫傷歯牙欠損などの怪我を負い、後遺障害として併合8級の認定を受けた後に、弁護士を立てて、自動車を運転していたYさんを相手に、治療費休業損害・怪我や後遺障害の慰謝料逸失利益など合計で約2350万円の損害賠償を求める裁判を起こしました。

そこで、Yさん側の保険会社を通じて当事務所の弁護士がYさんの代理人となり、裁判において以下の点を争いました。

自転車側に一時停止があったのか

まず、この交通事故が発生した現場では、自転車側に一時停止の規制が行われていました。Xさん側は一時停止をしたと主張して、自らの過失は15%程度に止まると主張していました。
一方、私たちYさん側は、本件事故現場の形状、自転車の損傷状態、Xさんが顔面を自転車の運転席のドアバイザーに打ち付けていたこと、それによる怪我の状態などから、Xさんが一時停止をしていない可能性が高いことを主張しました。

※ 一時停止をしたか否かによって「10%」の過失の増減することになります。

顔面の醜状痕などの評価

また、男性の場合、歯牙欠損や顔面の醜状痕が後遺障害として認められても、通常の後遺障害の場合と異なり、その等級に応じて設定されている労働労力喪失率(併合8級の場合は通常45%)よりも低い数値に評価されています。
そこで、Xさん側も従前の裁判例などを参考にしながら、労働能力喪失率を「10%」とかなり控えめに主張してきていました。
その上で、私たちYさん側は、より労働能力を低く認めた裁判例などを探しだし裁判所に提出するとともに、事故後もXさんの収入額に大きな減少がないことなどを併せて主張し、Xさんの場合には後遺障害が残存しても逸失利益が発生しない可能性があることを指摘しました。

裁判所の判断

その結果、裁判所は、まず自転車側に一時停止があったのか否かについては、当方の主張を認める形で、

Xさんが一時停止をしたとは認められない

という見解を示され

Xさん側の過失 15% ➡ 25%

ということになり,顔面の醜状痕など後遺障害の点についても、当方の主張が考慮される形で、

労働能力喪失率 10% ➡ 7%

という見解も示され、最終的に

請求金額2350万円 ➡ 1480万円

という金額で和解が成立しました(最終的には、Xさんが請求した金額の35%以上の部分を減額することに成功しました。)。