駐車場の通路を進行するクルマと、駐車区画から通路へと進入を開始したクルマとが出会い頭で接触する交通事故が発生した場合、運転者双方の過失割合はどうなるのでしょうか。
東京地方裁判所の民事27部(交通事故の裁判ばかりを扱っている部署)の裁判官達が編集した『別冊判例タイムズ38 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版』という本には、以下のような指摘がされています。
駐車場の通路は、駐車場を利用するクルマが移動をするために不可欠な設備であることから、クルマが駐車場内の通路と駐車区画との間を出入りすることが当然に予定されています。したがって、駐車場の通路を進行するクルマ側は、駐車区域に駐車していたクルマが通路に進入してくることを常に予見すべきであって、駐車区域から通路へと出てくるクルマとの接触と回避することができるような速度と方法で通行する義務を負っています。
他方で、駐車区域から通路へと出てくるクルマについては、その前提として駐車区域に停止していたのであることから、通路を進行してくるクルマよりも容易に安全を確認し、接触を回避することができます。また、駐車区域から通路へ出て行くということは、通路における他のクルマの進行を妨げることになります。したがって駐車区域から通路へと出て行くクルマ側には、進入しようとする通路の安全を確認し、通路を進行してくるクルマの通行を妨げるおそれがある場合には通路への進入を控える義務も負っています。
このような双方のクルマ側に課されている義務を比較すると、駐車区画から通路へと出て行くクルマの方に、より重い注意義務が課されていることになります。
そこで、駐車場の通路を進行するクルマと、駐車区画から通路へと侵入を開始したクルマとが出会い頭で接触する交通事故が発生した場合については、
通路を進行してくるクルマ 20%
駐車区域を退出するクルマ 80%
という基本となる過失割合が設定されています。
もっとも、駐車区画から通路への進入が通路を進行してきたクルマの直前で行われたような場合など過失割合を修正する要素なども指摘されています。万が一、駐車場でこのような事故に遭ってしまった場合に、保険会社から提示された過失割合が妥当なのか、修正する要素があるのかなど疑問があれば、一度、弁護士に相談していみるのも解決方法の一つでしょう。