交差点で、対面信号機が「赤&右折青矢印」を表示しているときに、「赤信号」だから対向車が着信してくることはないだろうと考えて、「右折青矢印」であることを利用して、交差点をUターンしていくクルマをしばしば見かけますよね。

では、もし対向車が前方の「赤信号」を見落として、停車せずに交差点を直進してきたために、「右折青矢印」を利用してUターンをしていたクルマと衝突する交通事故が発生してしまった場合、この交通事故における双方の過失割合はどうなるのでしょうか。

裁判所の判決

この点について判断した裁判例(東京地方裁判所H14.08.27判決、交通民集35巻4号1161頁)によれば、双方の過失割合について、

Uターン車側  30%
対向直進車側  70%

と認定されています。

その理由として、対面信号が「赤&右折青矢印」を表示しているとき、車両はこの交差点を右折し交差道路へと進行することができるだけであって、Uターンすることは形式的には「赤信号に違反する行為」にあたることを判決は指摘しています。その上で、「右折青矢印」を利用してUターンしょうとする運転行為は実際に多くの例が見られるし、一般に運転者としては特に違法な行為と認識しておらず、速やかにUターンする限り行為の危険性も少ないという点を考慮して、赤信号を見落とした交差点に進入してきたクルマ側に比べて社会的非難の程度が軽いとして、先ほどのような過失割合を認定しています。

道路交通法が改正されたことによって過失割合も変更する

しかしながら、この裁判例は,現在の道路交通法の下では、先例としての妥当性を失っているでしょう。なぜかというと、平成24年4月1日から、交差点がUターン禁止の指定を受けていない限り、「右折青信号」において右折だけではなくUターンもできるように法律(道路交通法施行規則)が改正されたからです。

そうすると、現在では上記の法改正を受けて、「右折青信号」でUターンしようとするクルマは、右折しようとしているクルマと同じように取り扱うのが妥当でしょう。そうすると、「赤信号」を見落として交差点に進入してきた対向車と接触した場合の過失割合について、基本的には

Uターン車側  0%
対向直進車側  100%

と取り扱うことになると考えます。

とはいっても、交通事故に遭わないことが何よりですから、「右折青矢印」を利用して交差点をUターンしようとする場合、対向車線のクルマの動きに注意をして、対向車が「赤信号」で停車したことを確認してからUターンをする方が良いでしょう。