交通事故が起こったときに、当事者双方の過失が「0:100だ!」とか、いやいや「2:8だ!」とか、まてまて「5:5だ!」とかいう話を聞いたことがあるかもしれません。

これは、自分側の過失の分だけ、賠償額が減らされてしまうということで、交通事故の被害に遭った人にとって大きな関心事ですよね。

賠償額が減らされる根拠

まず、この賠償額が減らされてしまうことについては、ちゃんと法律に根拠があります。民法という法律の第722条2項には「(交通事故などの不法行為にあった)被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。」と書かれています。これが法律用語で【 過失相殺 】と云われているもので、この条文を根拠にして、交通事故の加害者側の保険会社は「被害者様にも20%の過失があるので、その分を差し引きます。」などと主張してくるわけです。

過失割合を判断する基準

このように何も保険会社は悪気があって「差し引く」と言ってくるわけではなく、ちゃんと法律上の根拠がある主張をしているわけです。それでは、交通事故ときに話題にあがる「0:100だ!」とか、いやいや「2:8だ!」とか、まてまて「5:5だ!」とかいうこの数値、いったいどうやって割り出しているのでしょうか。

この点についても、保険会社や弁護士が主張してくる数値には、ちゃんと根拠があることが殆どです。その根拠となっているのは、東京地方裁判所の民事27部(交通事故の裁判ばかりを扱っている部署)の裁判官達が編集した別冊判例タイムズ38 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版という本です。この本は、これまでに積み重ねられてきた数多くの交通事故の裁判例や道路交通法規が要請している交通ルールなどを考慮して、一般的に想定される交通事故の態様ごとに、当事者双方の過失割合が定められています。そして、実際の裁判の場においても、この本を重要な参考資料であることが前提となって、双方の弁護士は自分の依頼人(裏を返せば相手方)の過失割合を主張していきます。

そういうわけで、示談交渉の場において、保険会社や弁護士は、このような認定基準があることを前提に過失割合の話をしてくるので、被害者の人の方でも被害者意識から変に凝り固まることなく、冷静に保険会社や相手弁護士の話を聞いてみる必要があるでしょう。しばしば、保険会社側で過失割合について被害者側に有利な形で譲歩していたのに、被害者の方で意固地になって過失割合に納得しないでいたところ、保険会社側が弁護士を入れた結果、有利な提示を受けていた過失割合をひっくり返されてしまい、「あのとき示談しておけば…」と後悔するような事態になってしまう被害者の人も見受けられます。

もちろん、交通事故といっても全て同じという訳ではなく、それぞれの事故に特有の事情ということもあるでしょうから、保険会社や弁護士からの過失割合の提示に納得できないような場合には、一度、弁護士に相談してみるのも一つの解決方法でしょう。