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歩道上での自転車と歩行者との交通事故が発生した場合、歩行者にも過失があるのでしょうか。

基本的となる過失割合は?

 相談者 

歩道を自転車で走っていたら、すれ違った女性のバッグが自転車のハンドルに引っかかってしまい、女性が転んで怪我をしてしまいました。相手の女性の方も、前から私の乗った自転車が近づいてくるのが分かっていたと思うのですが、私が一方的に悪いと言われてしまっています。

 弁護士 

自転車も車両ですから、原則として車道の左端を走行しなければなりません(道交法17条1項)。道路標識等で自転車が歩道を走ることができる場合でも、自転車は歩道の中央から車道寄りの部分を徐行しなければなりませんし、歩行者の通行を妨げるような場合には一時停止をしなければなりません(道交法63条の4)。
相手の女性が持っていたバックがハンドルに引っかかるほど近くを自転車で走行したというのですから、相手の女性に過失は認められないでしょう。

 相談者 

そうですか...
ところで、今、自転車は歩道を徐行しなければならないと言っていましたが、徐行って具体的に何キロくらいをいうのですか。

 弁護士 

徐行とは車両が直ちに停止できる速度をいいますが、自転車の徐行は、歩行者の歩く速度がだいたい時速4キロ程度といわれていますから、そのことから考えて時速6~8キロ程度といわれています。

過失割合の修正要素は?

 相談者 

それでは、歩道に「自転車通行指定部分」が指定されている場合で、その指定部分で歩行者と自転車とが接触した場合、歩行者側にも過失がでるのでしょうか。

 弁護士 

この場合、歩行者は自転車通行指定部分をできるだけ避けて通行するよう努めなければなりません(道交法10条3項)。他方で、自転車は指定部分では、歩行者がいなければ安全な速度で走行することができますが、歩道上での歩行者優先は同じで、歩行者を発見すれば徐行しなければなりませんし、歩行者の通行を妨げる場合には一時停止をしなければなりません。
したがって、裁判などで参考にされる過失相殺基準(別冊判例タイムズ38 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版)でも、自転車通行指定部分での事故だからといって歩行者に過失を認めるのは相当でないとされています。

 相談者 

では、どういった場合に歩行者にも過失があったとされるのでしょうか。

 弁護士 

歩行者は、歩道上で自転車に対して注意を払う義務はないとされていることから、歩道上で事故が発生した場合、原則として歩行者側に過失が認められることはありません。
ただ、歩道を通行することが許されている自転車が、歩道中央から車両寄りを徐行しながら通行しており、歩行者がわずかに注意をすれば事故を回避することができた場合には若干の過失が歩行者側にも発生するとされています。裁判などで参考にされる過失相殺基準では、具体例として、歩行者が予想外に大きくふらつくなどして、自転車の進路前方に急に飛び出してきた場合が想定されており、5%ほどの過失が歩行者にも認められるようです。

自転車保険の加入も検討しよう!

 相談者 

自転車の責任は厳しいのですね。それでは、自転車で事故を起こしてしまった場合、自動車保険は使えますか。

 弁護士 

原則としては使えませんが、保険の特約で「個人賠償責任保険」が付いていれば使えます。
また、加害者になった場合の責任保険と被害者になった場合の傷害保険とをセットにした「自転車保険」などもありますから、自転車をよく利用するような人は、事故に備えて加入を検討してみるとよいでしょう。