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先日のF1日本GPの決勝レースでクラッシュし意識不明の重体になり入院治療中のジュール・ビアンキ選手(マルシャ所属)の容体について、チームから「びまん性軸索損傷」であることが発表されました。

びまん性脳損傷(軸索損傷)の場合、頭部に回転性の外力が加わることにより、大脳皮質と脳底(大脳辺縁系および脳幹)部を連絡する神経軸索が広範に断線したり損傷を受けることから、① 記憶障害(覚えられない、思い出せない、すぐに忘れる状態など)、② 注意障害(気が散りやすい、集中できない、あるいはずっとぼんやりしている状態など)、③ 遂行機能障害(手順がバラバラで要領よく計画的に行動することが出来ない、複数の作業を同時にこなすことが出来ない状態など )、④ 人格情動障害(すぐにキレる、病的猜疑心や固執性など)、その他にも多彩な症状が発現するなど高次脳機能に深刻な後遺障害が残ってしまう場合があります。

このような高次脳機能障害が後遺障害として残ってしまった場合、レーシング・ドライバーにとって致命的な障害となりかねません。
事故から3日経った今も、ビアンキ選手の意識が戻っているという報道はありません。国土交通省の高次脳機能障害に関する報告書(平成23年3月)によれば、脳外傷直後の意識障害(半昏睡~昏唾で開眼・応答しない状態:JCSが3~2桁、GCSが12点以下)が少なくとも6時間以上、もしくは健忘あるいは軽度意識障害(JCSが1桁、GCSが13~14点)が少なくとも1週間以上続いているような場合には、永続的な高次脳機能障害が残ることが多いと報告されています。

本当に心配です。少しでも早くビアンキ選手の意識が戻り、後遺障害もなく再びレーシング・ドライバーとして活躍できることを心から祈るばかりです。

【 追記:2015年7月18日 】

2014年のF1日本グランプリでのクラッシュで重症を負い、意識を失ったままフランスの病院で療養を続けていたジュール・ビアンキ選手が亡くなりました。
謹んでご冥福をお祈りいたします。