オタクの聖地である東京都中野区の古書店「まんだらけ」から鉄人28号のフィギュアを万引きしたとされる50歳の男性が、今日、窃盗罪で東京地裁に起訴されました。

この事件では、「まんだらけ」が防犯カメラの画像(男性の顔にモザイクがかかったもの)を公開して、フィギュアの返還を求めたりして、一躍、時のニュースになりました。

それでは、もし犯人が自分から店や警察に名乗り出ていたとしたら、どうなっていたのでしょうか。改めて刑事事件でポイントとなる点を考えてみたいと思います。

盗んだフィギュアを売る前に名乗り出て返還した場合

もし、盗んだフィギュアを売却することなく、反省をして、「まんだらけ」に名乗り出てフィギュアを返還していた場合、犯人とされる男は、逮捕も起訴もされなかった可能性が高いと思います。

「まんだらけ」としては防犯カメラの画像を公開して、フィギュアを返さないと画像もモザイクを外すといった警告を犯人に対してしていました。このことから、店側は何よりも盗まれたフィギュアを取り戻すことを一番に考えていたことが想像できます。

したがって、この段階でもし、弁護士に付き添われるなどして犯人が「まんだらけ」に名乗り出て、反省文や誓約書(二度と店に立ち入らないこと)とともにフィギュアを店側に返していれば、交渉次第では被害届の取り下げなどが行われ、犯人は逮捕も起訴もされなかったかもしれません。

盗んだフィギュアを売約してしまった後で名乗り出た場合

盗んだフィギュアが売却されてしまっていたら、おそらく「まんだらけ」としても被害届を取り下げる理由はないでしょうから、犯人の処罰を求めることになると思います。そうすると、被害届の取り下げなどをしてもらえないのなら、犯人として名乗り出るメリットは何もないのでしょうか。

いいえ、あります。自首という問題があるからです。

刑法42条1項には「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。」と規定されています。ここに規定されている「捜査機関に発覚する前」というのは、簡単にいうと何処の誰だかまだ捜査機関に把握されていない状態をいいます。

犯人が盗んだフィギュアを売却した後でも、店側による画像の公開などによって逃げ切れないと思って、自分が犯人だと警察に名乗り出たときに、まだ警察の方で犯人が何処の誰だか把握できてなければ、自首が成立し、裁判で犯人にとって刑を減軽してもらえたり、有利な情状として考慮してもらえることになります。

また、すでに警察が犯人を特定できていて自首が成立しない場合でも、自ら進んで警察に出頭していれば、自首ほどではないものの刑を決めるにあたって犯人にとって有利に考慮してもらえる事情になります。