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これは私が保険会社側の代理人として担当した案件です。

事案の内容

交通事故によって頭部を強く打ったというXさん(事故のとき5歳)は、事故後に学習障害や注意力障害などといった後遺症が発生し、医師からは「高次脳機能障害」との診断を受けていました。また、自賠責の後遺障害等級認定でも「9級10号(神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの)」との認定も受けていました。

そのため、Xさんの両親は、交通事故の加害者であるYさんに対し、後遺障害による損害などを含め合計約4700万円の賠償を求める裁判を起こしました。

そこで、加害者であるYさんと契約していた保険会社を通じて、私がこの裁判を担当することになりました。

この裁判では、Xさんに発生している学習障害や注意力障害などといった後遺障害(高次脳機能障害)が交通事故によって脳がダメージを負ったことによるものなのかが争点となりました。

裁判所の判断

まず、私は、交通事故によってXさんが脳にダメージを負ったのかを確認するために、裁判所を通じてXさんの事故後に治療を受けていた医療機関からカルテやMRI画像などの医療記録を取り寄せることにしました。そして、取り寄せて医療記録を検討してみたところ、Xさんには事故直後に意識障害が発生していたような形跡がないことや、MRI画像でも脳の萎縮がないなどといった交通事故を原因とした高次脳機能障害でよく見られる所見がありませんでした。

そこで、私は、脳神経外科医に裁判所を通じて取り寄せたカルテやMRI画像などの医療記録を検討してもらい、その上で、Xさんに発生している後遺障害(高次脳機能障害)が交通事故による脳のダメージによるものなのか否かについて意見書を書いてもらうことにしました。

その意見書には「Xが交通事故によって脳にダメージを受けたとは認められない。したがって、発症している高次脳機能障害は交通事故の外傷によるものではない。」と記載されていたことから、私は、この意見書を証拠として提出するとともに、この意見書の内容を裁判官により理解してもらうための書面などを作成し、裁判所に提出しました。

また、Xさんの母親の証人尋問が行われた際には、事故後のXさんの様子や、治療の経過、学校な家庭でも生活状況などを訊くなかで、Xさんの後遺障害(高次脳機能障害)が交通事故による外傷にしては不自然な点があることを裁判官にアピールできるように尋問をしていきました。

その結果、裁判所の判決では「Xさんが交通事故によって脳にダメージを受けたとは認められない。」というように私どもの主張を全面的に認めた上で、Xさんに発生している学習障害や注意力障害は、交通事故によるストレスを原因とした非器質性(外傷ではない)精神障害であると認知し、後遺障害の程度については

9級(労働能力喪失35%) ➡ 12級(労働能力喪失14%)

というように落として評価し、損害賠償額の額も

請求額4700万円 ➡ 認容額790万円

というように大幅な減額に成功しました

このように、交通事故による高次脳機能障害の案件では、専門的な知識と経験を有する弁護士に相談をし、その助力を受けることが必要となります。